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「どん底から何度でも這い上がる」 須亮司
『どん底から何度でも這い上がる』

「帰ってみたドッキリ」の生みの親、口を開けば単語の頭文字を入れ替えてケタケタ笑う横山颯野社長からバトンを受け取りました。

※とわしゃんの門出をお祝いするための会で僕が熱唱した「おどるポンポコリン」は至って真剣で決してちょけではありません。
機械創造工学科3年の須です。

自分の気持ちを整理するためにも書き始めます。かなり長くなってしまいましたが、泥臭い本音を最後まで読んで頂けると嬉しいです。


2025年7月5日、新人戦。
膝の痛みを堪えながらプレーし続けた半年間であったが、ついに身体が限界を迎えチームを離脱することとなった。
2年生から誰よりも試合で活躍したいという強い思いは、この日歩くだけで激痛が走る脚、脱臼を繰り返す肩、そして心の底から怒りが湧いてくるような不甲斐ないプレーによって、無情にも否定された。

当初、全治は約3ヶ月と診断された。肉体的な苦痛から精神的に冷静な判断で目標に向き合えていなかった当時の自分にとって、この離脱は自分を見つめ直し、万全な状態でさらなる高みを目指すための好機なのだと、自分に言い聞かせていた。
ところが、前期の期末試験が終わり、長い夏休みが過ぎ、後期の中間試験が近づく頃になっても、事態は好転しなかった。必死にリハビリを続けて4ヶ月が経過したというのに、右膝はいまだに階段を登る時ですら痛みを発していた。

離脱後の夏合宿中に行われた個人面談。ゆうとさんからは「評価はバツです」と告げられた。怪我でプレーできないもどかしさの中、内側から湧き出る溢れんばかりの情熱をぶつける先がなく、ただただ悔しさが募った。「俺の力はこんなものではない」とピッチの上で証明したい気持ちとは裏腹に、身体は激痛で動かすことすらままならなかった。

結局、怪我は完治せず、後期のリーグ戦でユニフォームに袖を通すことは一度もなかった。そんな中、チームは昇格プレーオフへと駒を進める。
1年生の時、降格プレーオフの結果、チームを2部へ落としてしまった苦い経験がある。だからこそ、サテライトAを1部に戻すことに対して並々ならぬ使命感を抱いていた。しかし、運命の当日、自分が立っていたのはピッチではなく応援席だった。
結果は0-2の敗戦。昇格は叶わなかった。当時のサッカーノートには、ただ一言、「自分には悔しがる資格もない」と書き残されている。

大好きだった当時の4年生と満足にプレーできないまま、シーズンは幕を閉じた。
膝の痛みがようやく和らぎ、リハビリの強度を上げられるようになった矢先、今度は右肩が切り返しをするだけで外れるようになってしまった。積み重なる葛藤の末、自分は人生で8度目となる手術を決断した。
長い時間共にリハビリをした先輩や同期には、「またプラス6ヶ月かな」と笑い混じりに報告した。彼らの目に一瞬浮かぶ失望感や心配の色に耐えきれず、自分はできるだけ気丈に振る舞うことしかできなかった。

肩の術後は髪を乾かすことや歯を磨くことすらままならない自分を突きつけられ、どうしようもない焦燥感に駆られる日々が続いた。しかし、長い間不安を抱えていた身体が完全にニュートラルに戻るのではないか、という淡い期待を胸に、また1からスタートを切った。
一時的な「モチベーション」に頼って行動することをやめ、1週間単位でやるべき事を整理した。過去の怪我で生まれた左右差や緩んだ靭帯による身体の不良を補填するために必要な筋力トレーニングや許可された範囲でできる体幹トレーニングをカレンダーに割り振り、疲労管理をしながら少しずつ進めた。リハビリを日々のタスクとして、ただ無心に、ひたすらやり続けた。
その甲斐あってか、長い春休みの間、以前のようにカレンダーアプリに刻まれた復帰目安の日をなぞり、焦ることもなくなった。
加えて、衰えた体力を戻し、鈍ったボールタッチの感覚を磨く。怪我によってマイナスを指していた俺の成長曲線が、ようやく「0」を指し、スタートラインに立てる時が近づいていた。久々に、サッカーの純粋な楽しさを再確認していた。

だが、現実は残酷である。
あと少しで復帰できる。そう確信していた矢先、練習中に左肩を脱臼してしまった。
準備不足だったわけでも、調子に乗っていたわけでもない。どれだけ万全な準備を重ね、ケアを徹底していようが、その過程を嘲笑うかのように怪我は突発的に襲いかかる。
腕に白い三角巾を吊った自分の姿に向けられる、周囲の視線が痛いほど突き刺さる。それに耐えられず、俺はまたしても自分の心に蓋をした。あたかも、すでに気持ちを切り替えているかのように振る舞おうとした。
無心でその日の授業を受け、最寄り駅に辿り着く。駐輪場の前で、自転車に乗ることすらできない自分と対面したとき、初めて、自分が再び「マイナスの日々」へと引き戻された現実を突きつけられた。
人目も気にせず、嗚咽した。家までの道をただ一人、自転車を押して歩いた。


「何のためにサッカーを続けているのか」
誰かにやらされているわけではないのだからこの問いの答えは自分が1番理解しているはずだが、長い間サッカーをしていないとその答えに確信を持てなくなる時が来る。
「支えてくれる家族や友人かつての指導者など、応援してくれる方々に、自分がプレーする姿を見せることで勇気を与え、恩返しをしたいから」
確かにそれは自分の中にある大切な価値観であり、プレーを続ける理由の一つではある。
しかし、これほど多くの怪我を経験し、自分の膨大な時間を捧げてまで「他者のために」プレーを続けるというのは、当時の自分にとってはどこか綺麗事のように感じられてしまった。

中学時代、周囲には自分より上手い選手が溢れ、隣のピッチでは自分より何倍も大きくて速いプロ選手が練習をしていた。その中で、自分はどこか「プロになるのは無理なのだろう」と、自分の限界を決めつけてしまっていた気がする。誰にも負けないと自負していたスピードで勝てなくなり、相対的に身長も伸び悩んで当たり負けをするようになった。サッカーの巧拙がそのままヒエラルキーの頂点を決めるような環境で、自分の立場は日増しに弱くなり、いじめに近い扱いを受けた時期も経験した。

「何のためにサッカーを続けているのか」この問の答えに関わる「サッカーに対する情熱」の根源は、ここにある。
プロ選手に対して憧憬という名の偶像を作り出し、早々に本気でプロになろうとすることを諦めてしまった自分の弱さを打ち破りたい。もう一度、かつての仲間たちと同じ土俵で勝負したい。これら想いがあるからこそ自分は「今」という時間に本気で向き合い、何度でもピッチに立ってサッカーを楽しみたいと思えるのだろう。
人生においてここまで何かに本気になれる瞬間を1秒たりとも無駄にしたくないし、その過程を楽しみたい。
大好きなサッカーを続ける理由ぐらい「誰かのため」ではなく「自分のため」に限られた今を捧げたいから、で十分である。
一瞬ですべてが塗り替わる、あのヒリヒリとした緊張感に満ちたピッチ。持てる力のすべてを注ぎ込んでも、ようやく届くかどうかというゴールに手をかけるその瞬間まで、決して後悔したくない。その強い思いこそが、今の自分を突き動かしている。

中学1年生からの約8年間。そのうち、ピッチの上でプレーできていたのは、たったの3年間だけだった。もはや、学生時代に力を入れたことを問われたら、「リハビリ」と答えてしまいそうである。
怪我をするたび、その都度どん底まで突き落とされるが、毎回行き着く思考は同じだ。
大好きな漫画『ONE PIECE』に登場する、ジンベエの言葉を思い出す。
「失った物ばかり数えるな! ないものは無い! お前にまだ残っておるものは何じゃ!」
ベタで幼稚に感じるかもしれないが、幾度となくこの言葉に救われてきた。
目を向けるべきは過去ではなく、未来なのだ。言葉にするのは簡単だが、物事が上手くいっていないときに過去を後悔せず、前だけを見るのは想像以上に難しい。しかし、それでも数え切れないほどの挫折を経て、残っているものの尊さを知った。
重要なのは、今自分に残されたものに感謝して目標に向かって一歩一歩、誠実に突き進むこと。それ以外に道はないのである。

自分にはまだ、前へと歩みを進める足がある。共に緑ヶ丘に集う仲間がいる。恵まれた環境がある。将来について熱く語り合える友達も、いつも支えてくれる家族もいる。もう子供と言える年齢ではないが、挑戦するための十分な時間と、動かすことのできる身体がある。
振り返れば、自分には他にも数え切れないほどの財産がある。それに気づけたからこそ、今は日々、感謝と共に生きることができている。
「俺ならやれる、大丈夫」。
どんなに苦しい時であっても、そうやって自分を信じ続けることで、俺はこれまで何度でも立ち上がり、這い上がってきた。

約1年越しに、また仲間と共にサッカーをする瞬間がそこまで来ている。この先、またどんな壁に直面するかはわからない。どん底に突き落とされることだってあると思うが、その度に何度だって這い上がろう。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
復帰後も決して簡単にはいかないと思いますが、謙虚にそして貪欲に青学を代表する選手になって必ず関東で活躍します。
今シーズン必ずピッチに戻って恩返しします!どうか応援よろしくお願いします!

次は、朝のチャリとバイトの強度がプレミアリーグの内部育ち、グルメ長澤広大君です。
先日の慶應戦のMOMで彼の口角はまだ下がってません。

  
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