青山学院大学サッカー部オフィシャルサイト

1993年入学 和田 一郎さん

 

これほど長きにわたり、日本代表を支え続けた人材はかつて存在しないであろう。大学時代はその生真面目なキャラクターから同級生に留まらず後輩たちからも愛された。その一端は日本代表トルシエ監督のスタッフ時代にも垣間見られた。ある晩、テクニカルスタッフとしてデータ分析に追われていた和田さん。突然部屋にトルシエ監督が現れ、冷めたコーヒーカップに触れて満足げに部屋を出ていったとのこと。コーヒーが覚めることも意に介さず作業に没頭する和田さんの仕事ぶりにトルシエ監督は更に信頼を熱くし微笑んだ。今回は日本代表の頭脳から、現場指導への還元へ転身を図った和田一郎さんに伺った。

【Q1:大学時代の心に残る思い出は?(学生生活、サッカーについて) 】
チームメイトとの交流です。僕らの時代は、1・2年次は厚木にキャンパスがあり、僕は一人暮らしをしていました。よくチームメイトも遊びに来ていて。外にある洗濯機の中に鍵を入れておいたのですが(今考えると危ないですね)、僕が不在時には、チームメイトがそれを使って家に入って僕の帰宅を待っている時もありました。ある日、僕が家に帰ったら、三浦淳宏(後に代表チームで一緒になります、現在のヴィッセル神戸スポーツダイレクター)と市村剛(今はTV関係の仕事でサッカーの番組を作っています)というチームメイトが、家にいてカレーライスを食べていたんです。そんなの家にあったかな?と思っていたら、なんと僕の母もいて。初めての一人暮らしで、千葉の実家からわざわざ様子を見に来てくれたそうです。そしてカレーを作ってくれていたみたいですけど、その最中に彼らが家に入ってきて。3人ともびっくりしたみたいですけど、せっかくだからカレー食べていきなさいと。作り置きできるくらいの量のカレーを僕が帰った時にはきれいに完食されていました(笑)。今でも彼らは、僕に会うと『お母さん元気?カレー美味しかったな』と言ってきます。彼らとも今でも時折連絡を取り合っています。

【O2:大学院への進学を決めた契機はなんでしょう? 】
将来自分は何をしていたいかを真剣に考えた時、サッカーに関わって生きていきたいと思ったからです。宮崎純一先生にアドバイス受けて、Jリーグの監督になるために必要なS級ライセンスの講座を筑波の大学院生になればその講義を受けられるということを知りました。筑波大学院でトップレベルのサッカーの勉強をしながら平行して専修教員免許を取得できれば、教員として指導しながらサッカーに関わって行くことが出来ると思ったことがきっかけです。

【O3:筑波大での出来事で心に残っていることは? 】
S級講座を受講できたことです。専門的なプロレベルのサッカーの戦術論もあれば、選手を納得させるために必要なコミュニケーション能力を高めるディベートの授業などもあり、実践的なものばかりでした。また、当時のS級講座を担当していた田嶋幸三さん(現サッカー協会会長)が、U15日本代表の監督になり、JFAの仕事をサポートスタッフとして手伝いをしないかと声をかけて頂きました。2年目からはS級講座を講師側からサポートし、U15日本代表の活動にも参加させて頂きました。非常に貴重で印象に残る経験でした。

【O4:多くの日本代表監督と関わられていますが、それぞれの方との交流について教えて下さい。 】
フランス人のトルシエ監督(2002年日韓W杯)については要求が非常に高い監督でしたが、繊細なDFラインコントロールや攻撃のオーガニゼーション、ミーティング時のプレゼンの仕方など素晴らしいコンセプト・方法論を学ばせてもらいました。日本で行われたワールドカップの初戦のベルギー戦では、試合開始時に足が震えたのを覚えています。
ブラジル人のジーコ監督(2002-2006年ドイツW杯)は選手・スタッフを家族と公言し、仕事に対しては真摯に取り組みますが、それ以外はリラックスしメリハリをつける方でした。人生の多くを捧げていく“サッカー”が過度にストレスになってはいけないというジーコ監督の考えがありました。代表チームの活動では、外国に行き長い期間を厳しい環境でサッカーをしなければならない時が多くありましたが、ジーコ監督の配慮のおかげで余計なプレッシャーを感じずに自分の仕事に取り組めました。
ボスニア人のオシム監督(2006-2007年)はまさにサッカーに人生をかけているような人でした。オシムさんの特筆すべき1つは、そのトレーニングの素晴らしさです。僕も選手の人数が足りない時には数合わせでトレーニングに入ったこともあるのですが、ほとんど全てのトレーニングで、敵がいて、状況を判断して、動きながら技術を発揮する要素が含まれており、プレーしていて非常に楽しく、このようなトレーニングをやることが出来ていたら自分はもっとサッカーがうまくなれたろうなと強く感じたことを覚えています。(笑)
岡田武史監督(2010年南アフリカW杯)は僕にとってはA代表で初めての日本人監督でした。しっかりとコミュニケーションを取って意見を吸い取って頂き、自分がそれまでに経験したことをチームにうまく活かしてくれました。常に新しいことに対し探求心を持ち、チームの様々な部分に目を配らせオーガナイズし、本当にチームが一つにまとまった日本代表でした。合宿中は、皆が仕事を終えた夜遅くに岡田監督の部屋に集まり、サッカーなどいろんな話題になるのですが、その時が一番貴重なお話を聞けていたと思っています。
イタリア人のザッケローニ監督(2010年-2014年にブラジルW杯)は非常に実績がある監督でしたが、日本人・日本文化をリスペクトしながら接して頂きました。イタリア人らしく戦術に関して非常に多くの引き出しを持っており、人間的にも素晴らしいパーソナリティーを持った方でした。2013年のコンフェデ杯でイタリア代表と対戦した時の話ですが、その分析をいつも通り僕にやらせて、選手へのミーティングも任せて頂きました。監督の母国のチームの分析を任されたことに信頼を感じ、いつも以上に深く丁寧に分析したことを覚えています。
西野朗監督(2018年ロシアW杯)は時間がない中でのチーム作り・マネジメントは素晴らしいと思いました。久しぶりに戻った代表チームでは、かつて若手であった選手が中堅へ、中堅だった選手がベテランとなっておりましたが、海外での経験も重ね、非常に頼もしく成長しているのを感じました。
それぞれの代表監督は、独自のサッカーの考え方・アプローチ・戦術・パーソナリティーを持っており、僕自身も多大な影響を受けました。監督が定めた方向に全員が一つになって向かっていけることが他国に誇れる日本代表の強さだと思います。また個々の選手自身も大きく成長していく過程を自分の眼で見てきたことは大きな財産となっていると思います。どのチームも最後はワールドカップで負けての解散となるのですが、その全てのチームで負けた悔しさよりも、このチームでの活動がこれで終わってしまうという寂しさの方が優っており、それは監督の素晴らしい人間性によって築かれたチームへの想いが強かった結果であると思います。

【O5:現職の様子はいかがでしょう? 】
今年から名古屋グランパスでコーチの仕事をしています。監督はイタリア人のフィッカデンティー監督です。過去にイタリア人と仕事をした経験があり、イタリア人のサッカー観や文化に多少の理解があったおかげで、スムーズに入れたと思います。またクラブは毎日が現場です。デイリーで選手・チームにアプローチできる、トレーニング・ミーティングできる、毎日サッカーができる、それは何事にも代えられない喜びです。今は新型コロナウィルスでJリーグが中断している状況ですが、早くサッカーが再開されることを願っています。今後も様々なアクシデントや状況変化が起こると思いますが、その都度柔軟に対応していけたらと思っています。

【O6:大学サッカーのススメとしてひとことお願いします。 】
昨年までは東京オリンピック世代の代表チームのコーチをしていました。主力選手は堂安や富安、久保建英など海外のクラブに所属している選手たちです。僕自身も海外やJリーグの視察もしましたが、時には関東大学リーグの2部まで足を運び選手を発掘しに行きました。大学にも彼らに匹敵するポテンシャルのあるタレントは確実にいます。しかし現状では差がついてしまっています。以前、ヨーロッパでドイツ代表のテクニカルスタッフに、海外に出た選手が成功するかどうかの最も大切な力はセルフコーチング能力(選手が自分で自分のことを分析し、コーチングすること)と聞いたことがあります。言葉も文化も慣習も違う環境で、手取り足取り面倒見てくれるわけでもありません。その中で順応し成功するには、自分で必要なことを考えて、アイディアを出して練習に取り組んでいく、状態によっては休息し回復に時間をあてる。コミュニケーションを自らとってチームに馴染んでいく等、全て自分自身で判断して行動しています。長谷部、本田圭介、川島など確かに当てはまります。 大学サッカーでは、まさにこれが求められている環境なのではないでしょうか?そして意識次第ではそれができる環境でもあると思います。指導者と選手がともに高い志をもって取り組めば、大学サッカーという4年間の中で、どんな成長も可能だと思っています。

【O7:青学サッカー部への応援メッセージを頂けますか?】
2018年ロシアワールドカップ期間中では、長友や香川といった選手が個別に自分たちのプレーや対戦相手の分析を聞きに来ました。彼らが若い頃には、チーム全体で行うミーティング以外では、そんなことはしていませんでした。変わったねと聞いたら、「こういう努力をしないとヨーロッパで長く生き残れないから」と言ってきました。聞くと、適切な栄養を摂取できる食事を作ってくれる人、マッサージなどコンディションを整えてくれる人、自分やマッチアップする相手のパフォーマンス分析をしてくれる人などを、チームとは別に自分たち自身で雇っているというのです。自分たちが今あるのはサッカーのおかげ、大好きなサッカーでうまくなるためには自分から努力は惜しまないし投資もするという姿勢を目の当たりにすると、彼らのパフォーマンスにも納得がいきました。こういう努力が当たり前であり、好きなサッカーだから苦ではないのです。 青学サッカー部の皆さん、サッカーであれ、なんであれ、好きであれば突き詰めてトライしてみてください。お金をかけろと言っているのではありません。いろんな刺激を自ら探しながら、工夫して夢中になってやってみてください。言うほど簡単なことではありませんが、好きなことであれば出来ると思います。そのプロセスを、在学中に経験しておいてください。夢中になれることが仕事にできるのは本当に幸せなことだと思います。皆さんにもぜひそうなって頂きたいです!
 

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    関東大学サッカー3部リーグ
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青学サッカーユナイテッド映画「MARCH」
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