青森山田高校サッカー部 公式サイト

青森山田高校サッカー部
監督 黒 田  剛
日本高校サッカー選抜チームを率いて
 日本高校サッカー選抜チームの欧州遠征は、40数年前から続いている伝統的な活動である。これは全国高校サッカー選手権大会の優秀選手がベース(選考)となり、世界という「夢の舞台」で戦う機会が与えられる。胸に「日の丸」を掲げられることになったのはここ数年の話で、JFAは当時からU18日本代表を第一に考える姿勢を貫いていたため許されていなかった。しかし、全国高体連サッカー専門部を支えてきた先人たちの、高校サッカーに対する「思い」や「熱意」が「日本代表」としての世界大会への参加を叶えてくれた。輝かしいユニホームに「日の丸」という大きな「責任」を胸にして、世界で戦えることを光栄に思うとともに、私を平成28年度チームの監督にご推薦いただいたことをも、心から感謝したい。
 第95回全国高校サッカー選手権大会。我が青森山田高校の「初優勝」から約3ヶ月が経ち、青森における歓迎ムードも落ち着いてきた4月。日本高校サッカー選抜チームによるドイツ・デュッセルドルフ国際ユース大会への挑戦が始まった。数回にわたる国内合宿、ネクストジェネレーションマッチ、ヤングフェスティバルなどを経て選考された選手18名を率いて欧州へと渡った。
 キャンプ地はオランダ・フンデロー。野生のウサギやシカ、イノシシまでもが頻繁に姿を現すほど自然豊かで、サッカーに打ち込むにはとても充実した施設・環境の中で選手たちは元気に合宿をスタートさせた。トレーニンググマッチで行われたU18オランダ代表との一戦においては、サッカー王国オランダに怯むことなく堂々と互角の戦いをした。結果は2対2と善戦し、大会前にチームの修正ポイントを確認できたことは大きな収穫であった。
 実はこのチームを率いてからいくつか気になる点があった。日本高校サッカー選抜チームは、高体連の選抜であり、日頃から各高校のチームで合宿や遠征、大会を通じて生活面や礼節、自己管理など厳しく指導されてきたので、そこにおける心配はないものだと思っていた。しかしスタッフに何から何までやってもらえる「甘い」環境に慣れ親しんだチームは、選考当初の緊張感も抜け、なま温い空気感の漂う集団に少しずつ変わっていった。挨拶を忘れ、感謝を忘れ、時間はルーズに、話を聞く姿勢すら散漫になっている状況も目についた。そこで選手たちには、四十数年も続くこの歴史ある高校サッカーの活動の意味をしっかり理解させるとともに、「高校サッカー16万人の夢をのせて戦う意義」「ここまでご指導いただいた各校の指導者への恩返しの意味」「この欧州遠征に尽力いただいたスタッフへの感謝の気持ち」を行動として実践していくよう強く要求した。これらすべてが「高校サッカーの歴史」であり、日本サッカーを支えてきた原点であることを再認識させた。監督としてそれだけは見逃したくなかった。
 合宿地をライン川のほとりのドイツ・デュッセルドルフに移し、過去に一度しか優勝経験がないほど難しい大会、デュッセルドルフ国際ユース大会に挑んだ。
 日本高校サッカー選抜のリーグ初戦は地元フォルトナデュッセルドルフとのオープニングゲームで19:00という少し遅めの時間にキックオフした。サッカーにおける世界基準とは、フィジカル、スピード、ジャッジ、雰囲気、レギュレーション、ズル賢さ、勝利への執念など、日本チームの「危機感」のない生活習慣は、ピッチ上でもあらゆるところで顕著に現れてくる。その「現実的な差」をいかに理解し、「したたかさ」を実践させるかが勝負における重要なポイントになる。この試合は2対0で勝利はしたものの、日本チームの意図するゲームプランからはほど遠い内容だった。そして一日の休日をはさんで迎えた大会二日目の第二戦は、ドイツの名門、優勝候補の一角マインツ。この試合は日本チームらしい守備のコンセプトがしっかり機能し、1対0で勝利することができた。理想通りの「したたかな戦い方」ができた試合だったと思う。そして連戦で迎えた第三戦は、この大会を「三連覇中」という圧倒的な強さを誇るオーストリアの名門レッドブルザルツブルグ。日本チームは勝てば決勝トーナメント進出ということもあり気合いを入れて臨んだが、結果は0対0の引き分け。お互いゴールを割ることができず、手堅い好守の光るゲームとなった。ここまで無失点、勝点7とリーグ首位。翌日の第四戦に望みをつなぐことになった。第四戦の相手はデンマークのノアシェラン。相手も日本チームに勝てば決勝トーナメント進出となるため、リスクを取らず勝利に徹した戦い方に転じてきた。日本チームは引き分けでも決勝トーナメント進出となるが、我慢比べとなると一瞬の隙を作ってしまうのが日本チームの「甘い」現状なのかもしれない。オフサイドを意識したDFラインの判断が一瞬遅れ、ゲームを通じて一本しか打たれていないシュートを見事に決められ0対1の敗戦。結局、その後のゲームでザルツブルグが勝利したことにより、残念ながら決勝トーナメント進出はならず、5、6位決定戦にまわることになった。5、6位決定戦の相手はブラジルのクルゼイロで、かなり個人能力の高いチームではあったが、「最終ゲームを勝利して終わろう」の合言葉が、選手たちのモチベーションを掻き立て、終わってみれば3対0の快勝で大会を終了することができた。目標には「一歩」届かなかったが、その「一歩」は何の差なのか、どうすれば補うことができるのか。たかが「一歩」然れど「一歩」・たかが「一秒」然れど「一秒」・たかが「10?」然れど「10?」私はこの距離を「執念の差」であると確信している。果てしなく遠い「一歩」であることに違いはないが、これは、「サッカー」→「日本国技」→「生活の一部」→「敗北を許さない環境」→「勝利への執念」日本には、これくらいの変化がないと埋まらない「一歩」だと断言できる。
2017/05/15 10:52
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